京大生ケミストのつぶやき

理系京大生が勉強中に思ったことを気軽につぶやきます。

有機化学 #4 ~Thiol~ 

 こんにちは。前回まではアルコールについてみてきました。今回はチオールについてです。これまでの話においてOHがSHに換わることになります。似ている現象もあるので比較しながら勉強するといいかもしれませんね!ではやっていきましょう!

 

構造

 メタンチオールの構造を見てみましょう。何が何を示しているのかわかりますよね^^ 図にあるように H_3C-S-Hの結合角は100.3°です。これはメタノール H_3C-O-Hの結合角が108.9°であるのと比較するとチオールの場合結合性軌道がOよりp性が高いと言えます。というのもアルコールの場合はsp^3混成軌道を取っていました。よってその結合角は120°に近いわけです。しかし第三周期以降の元素は混成軌道を取らないものが出てきます。そして今回のSは混成軌道を取らずよりp軌道に近い軌道をとっているということがp軌道の場合の結合角90°に近いことから言えるというわけです。

物理的性質

 SはOに比べて電気陰性度が小さいです。よってO-H結合の極性と比べてS-H結合の極性は低くなります。このことから次のことが言えます。

互いに水素結合を形成しない

 S-H間で十分に分極していないので、アルコールの場合とは異なり互いに水素結合を形成しません

アルコールに比べ沸点が低く、極性溶媒に溶けにくい

 水素結合を形成しないという理由から、アルコールに比べ分子間相互作用が小さいことがわかります。このことからアルコールより沸点が低いことが言えますね。またO-HほどS-Hは分極していないので極性溶媒に溶けにくいこともわかりますね。

Thiol の命名

 基本的にはアルコールの場合と同じです。化合物A, B, C についてみていきましょう。

主鎖の決定

 SH基を含む最も長い炭素鎖を主鎖とします。Aから順にButane, Propane, Propane です。

位置番号の決定

 SH基の番号が小さくなるように番号を振ります。しかしOH基がある場合異なります。というのも優先順位はOH基>SH基です。よってOH基がある場合はOH基を優先してください。下の図のようになります。ここで化合物C の番号の振り方が2通りあると

思った方がいるんじゃないでしょうか。なぜ3番炭素が図にある位置なのか。これは置換基が多くなるように番号を振るという規則に従ったものです。今回置換基は2つになりますが、3番炭素を2番炭素の上にある炭素とした場合置換基の数は1つになります。このルールは忘れやすいので気を付けましょう!

最終決定

 最後は位置番号と置換基名、主鎖の炭素の語尾にthiolをつけて終了です!アルコールと違うところは、アルコールの場合alkane をalkanol のようにe を除いてol をつけていましたが、チオールの場合はthiol をそのままつけるだけです。Alkanethiol ですね。それと、化合物C についてですが優先順位の高いOH基がある場合はSH基を置換基として扱います。この場合の置換基名はSulfanyl またはMercapto です。ではAから順に、Butane-1-thiol, 2-Methylpropane-1-thiol, 2-Methyl-3-sulfanylpropan-1-ol となります。

合成法

 チオールは求核置換反応やβ脱離反応で合成していきます。特に説明することはないです^^

酸性度

 下の図を見てください。硫化水素は水に比べ、チオールはアルコールに比べpKa の値が小さいです。すなわち酸性度が高いということです。この傾向は何に起因するのでしょうか。

これは原子サイズで説明ができます。Oは第2周期に属するのに対しSは第3周期に属します。よってSはOより原子の大きさが大きいです。電子はより大きな範囲に非局在化したがります。よって原子の大きいSだとより非局在化でき、ゆえにイオンがより安定するためpKa の値が下がるということです。

酸化

 最後は酸化です。詳しい反応は見ずに、どんな風に酸化されるのかだけ見てみましょう。

酸化は図にある通りです。ジスルフィド結合とか高校化学でやったのを思い出します(ゴムの弾性力を増させる方法として硫黄を加え分子間・分子内に架橋構造を作るというものでした)。

さいごに

 今回はここで終わりです。あまり深い話はなかったですがいろいろ話したので復習は怠らずやりましょう!では^^