京大生ケミストのつぶやき

理系京大生が勉強中に思ったことを気軽につぶやきます。

有機化学 #4 ~Thiol~ 

 こんにちは。前回まではアルコールについてみてきました。今回はチオールについてです。これまでの話においてOHがSHに換わることになります。似ている現象もあるので比較しながら勉強するといいかもしれませんね!ではやっていきましょう!

 

構造

 メタンチオールの構造を見てみましょう。何が何を示しているのかわかりますよね^^ 図にあるように H_3C-S-Hの結合角は100.3°です。これはメタノール H_3C-O-Hの結合角が108.9°であるのと比較するとチオールの場合結合性軌道がOよりp性が高いと言えます。というのもアルコールの場合はsp^3混成軌道を取っていました。よってその結合角は120°に近いわけです。しかし第三周期以降の元素は混成軌道を取らないものが出てきます。そして今回のSは混成軌道を取らずよりp軌道に近い軌道をとっているということがp軌道の場合の結合角90°に近いことから言えるというわけです。

物理的性質

 SはOに比べて電気陰性度が小さいです。よってO-H結合の極性と比べてS-H結合の極性は低くなります。このことから次のことが言えます。

互いに水素結合を形成しない

 S-H間で十分に分極していないので、アルコールの場合とは異なり互いに水素結合を形成しません

アルコールに比べ沸点が低く、極性溶媒に溶けにくい

 水素結合を形成しないという理由から、アルコールに比べ分子間相互作用が小さいことがわかります。このことからアルコールより沸点が低いことが言えますね。またO-HほどS-Hは分極していないので極性溶媒に溶けにくいこともわかりますね。

Thiol の命名

 基本的にはアルコールの場合と同じです。化合物A, B, C についてみていきましょう。

主鎖の決定

 SH基を含む最も長い炭素鎖を主鎖とします。Aから順にButane, Propane, Propane です。

位置番号の決定

 SH基の番号が小さくなるように番号を振ります。しかしOH基がある場合異なります。というのも優先順位はOH基>SH基です。よってOH基がある場合はOH基を優先してください。下の図のようになります。ここで化合物C の番号の振り方が2通りあると

思った方がいるんじゃないでしょうか。なぜ3番炭素が図にある位置なのか。これは置換基が多くなるように番号を振るという規則に従ったものです。今回置換基は2つになりますが、3番炭素を2番炭素の上にある炭素とした場合置換基の数は1つになります。このルールは忘れやすいので気を付けましょう!

最終決定

 最後は位置番号と置換基名、主鎖の炭素の語尾にthiolをつけて終了です!アルコールと違うところは、アルコールの場合alkane をalkanol のようにe を除いてol をつけていましたが、チオールの場合はthiol をそのままつけるだけです。Alkanethiol ですね。それと、化合物C についてですが優先順位の高いOH基がある場合はSH基を置換基として扱います。この場合の置換基名はSulfanyl またはMercapto です。ではAから順に、Butane-1-thiol, 2-Methylpropane-1-thiol, 2-Methyl-3-sulfanylpropan-1-ol となります。

合成法

 チオールは求核置換反応やβ脱離反応で合成していきます。特に説明することはないです^^

酸性度

 下の図を見てください。硫化水素は水に比べ、チオールはアルコールに比べpKa の値が小さいです。すなわち酸性度が高いということです。この傾向は何に起因するのでしょうか。

これは原子サイズで説明ができます。Oは第2周期に属するのに対しSは第3周期に属します。よってSはOより原子の大きさが大きいです。電子はより大きな範囲に非局在化したがります。よって原子の大きいSだとより非局在化でき、ゆえにイオンがより安定するためpKa の値が下がるということです。

酸化

 最後は酸化です。詳しい反応は見ずに、どんな風に酸化されるのかだけ見てみましょう。

酸化は図にある通りです。ジスルフィド結合とか高校化学でやったのを思い出します(ゴムの弾性力を増させる方法として硫黄を加え分子間・分子内に架橋構造を作るというものでした)。

さいごに

 今回はここで終わりです。あまり深い話はなかったですがいろいろ話したので復習は怠らずやりましょう!では^^

有機化学 #3 ~Alcohol~ 

 こんにちは。今回も引き続きアルコールについてです。(僕が)見たことのなかった反応とかが出てきますので、新しい知識を一緒に身に付けましょう!もちろん復習パートもあります^^

 

酸触媒によるアルコールの脱水

 酸触媒を用いてアルコールを脱水する反応をみてきます。これはE reaction ですので、復習パートです。

プロトン

 前回の記事を見てくれた方はもう見慣れている工程だと思います。いつも通りアルコールのOH基をプロトン化し活性化させましょう。ただし今回は酸触媒として濃硫酸を使用しています。よって水が少ないので反応式のオキソニウムイオンのところを直接硫酸で書いてもOKです!

カルボカチオンの生成

 水が脱離し、カルボカチオンが生成します。そしてここが律速段階となりますのでE1 反応機構であることがわかりますね。カルボカチオンの安定性がとても重要になります。今回は第二級カルボカチオンです。

プロトンの脱離

 最後、プロトンが取れて終わりです。cis とtrans の混合物が得られました。ここで今回は図の中でカチオンの左隣の炭素に結合しているプロトンが脱離しましたが、右隣りの炭素に結合しているプロトンが脱離してBut-1-ene が生成しないのか疑問に思った方がいるかもしれないので一応解説しておきます。結論から言うとほとんど考えられないです。それはザイシェフ則に従っているからです。この法則は置換体が多いアルケンほど安定で、ゆえに主生成物になるというものです。図にあるアルケンには2つのメチルが置換していると見ることができます。一方But-1-ene は1つのエチルが置換していると見ることができます。よって主生成物が決まるんですね。

アルコールを合成するための別の方法

 少し余談です。上ではアルコールからアルケンへの反応をみました。今度は復習としてアルケンからアルコールの反応をみてみましょう。

オキシ水銀化ー還元

 これはマルコフニコフ則に従う反応ですね。機構を見ていきましょう。

架橋マーキュリニウムイオン中間体

 二重結合のπ電子が水銀に攻撃して架橋マーキュリニウムイオン中間体が生成されます。どんな共鳴構造を取るか覚えていますか?

このようになります。左のカルボカチオンは2級、右は1級ですので、左のカルボカチオンの方が寄与が大きいです。

求核剤と求電子剤

 寄与の大きい方(置換基が多い方)で反応が起こり、求核剤の水と求電子剤の中間体との間に結合が生成されます。

最終処理

 最後にHgOAc を除いて終了です。ここのメカニズムはよくわからないです。

ヒドロホウ素化-酸化

 次はマルコフニコフ則に従わない、アンチマルコフニコフ則の反応です。

マルコフニコフ則に従っていればButan-2-ol が生成するはずですが、Butan-1-ol が生成していますね。メカニズムを確認しましょう。

求核剤と求電子剤

 モノボランBH_3では、ホウ素がδ+水素がδーに分極していて、ホウ素が求電子剤として働きます。求核剤のπ電子対がホウ素に攻撃してホウ素がアルケンの置換基の少ない炭素に、水素が置換基の多い炭素に結合します。この選択性の理由は、δ+のホウ素がアルケン置換基の少ない炭素に近づくことで置換基の少ない炭素が部分的にーに置換基の多い炭素が部分的に+になり、カルボカチオンとまでは言いませんがこれに似た安定性の議論が同様にできるからだと考えられます。この反応を後2回繰り返してホウ素が炭素と3本の腕で結合します。

ヒドロペルオキシドイオンとの反応

 過酸化水素水からのヒドロペルオキシドイオンと反応します。

転位

 今回で言うブチル基がホウ素の隣の酸素原子に転位します。R基ももちろん転位します。

最終処理

 すべての置換基が転位し終わるとホウ素と置換基の間に1つづつ酸素原子が挟まった状態になります。そして最後に水酸化ナトリウムで処理すればアルコールが合成できます。反応機構はわからんです。

 というわけで、復習パートは終了です。少し休憩したら次は見たことのない(?)反応を勉強していきますよ!

ピナコール転位

 2,3-Dimethylbutane-2,3-diol を例に見ていきます。これは2つのOH基が隣接しているグリコール(OH基を2つ以上持つアルコール)の脱水と転位ついてのお話です。メカニズムを一緒に追っていきましょう。

プロトン

 いつも通りOH基がプロトン化し活性化されます。脱離能が高まります。このステップはもう見慣れたのではないでしょうか。

カルボカチオンの生成

 活性化され脱離能が高まった置換基が脱離しカルボカチオンが生成します。脱離したのは水です。脱水ですね。

転位

 ここでより安定なカルボカチオンを求めて転位が起こります。すでに第3級カルボカチオンなので安定なのでは?と思うかもしれませんが、転位することで酸素原子のlone pair によって安定化されたり共鳴することによっても安定化されたりするため、この転位が起こります。すなわち第3級カルボカチオンでいるよりも、電気的な面と正電荷の非局在化の面の両面から安定化されるため転位した方が安定なのです。

プロトンの脱離

 最後にプロトンが脱離し、ケトンが生成して終了です。

 今回は対称性のあるグリコールについて見ましたが、非対称のグリコールについてはどうでしょうか。詳しい反応機構の説明は省きますが下のような反応があります。

最初のステップとしてOH基がプロトン化され活性化されますが、どちらのOH基が活性化されるのでしょうか?もう答えが書いてありますが、正解は図中の左側のOH基です。理由はそのあと生成されるカルボカチオンを考えればわかります。左のOH基の脱離→第三級カルボカチオンの生成、右のOH基の脱離→第一級カルボカチオンの生成です。わかりますね^^

アルコールの酸化

 詳しい反応機構は除いて、アルコールの酸化については高校化学でやりましたね。一級アルコール→アルデヒド→カルボン酸。二級アルコール→ケトン。三級アルコールは酸化されない。という話です。ここで特に重要な事項としてはアルデヒドが単離できるかできないかということが言えます。そこに留意しつつ酸化の反応を具体的な酸化剤とともに見ていきましょう。

クロム酸酸化

 まずはクロム酸を酸化剤としたアルコールの酸化を見ていきます。その前にクロム酸の生成について簡単に反応式を載せておきます。

このクロム酸を使うと以下の反応が起きます。

 第三級アルコールは酸化できず、またアルデヒドを単離して取り除くことができません。この反応機構を詳しく説明しますね。

クロム酸エステルの生成

 クロム酸エステルというのは見慣れないかもしれませんがエステル生成の反応としては全く特別なものではありません。ここでのクロムの価数はVIです。

酸化還元

 酸化還元反応です。第二級アルコールは酸化されケトンになりました。価数がVIだったクロムは還元され価数はIVになりました。

スワン酸化

 この反応はクロム酸化と同じ反応を示します。この反応では酸化剤として塩化スルホニウムを用います。

アルコールの活性化

プロトンの脱離

 トリエチルアミンを用いてプロトンを脱離します。

プロトンの脱離・結合開裂

 以上で反応は終わりです。出発の物質が第二級アルコールだったので最終的にケトンが生成されましたね。反応に必要な試料は (COCl)_2DMSO、トリエチルアミンです。

デス‐マーチン酸化

 この反応もクロム酸化と同じ反応を示します。

アルコールの活性化

 とてもいかつい構造ですよね。デス‐マーチンペルヨージナン(DMP)と呼ばれる化合物が今回の酸化剤です。具体的にはヨウ素の価数がVからIIIへと変化します。まずここではアルコールが活性化されています。

プロトンの脱離・結合開裂

 プロトンが奪われそれに伴い結合が開裂していきます。ここでヨウ素の価数がVからIIIへと変わっています(反応後のヨウ素のlone pair が1つ足りてないですm(__)m)。反応物は第一級アルコールだったのでまずは酸化されてアルデヒドになりました。クロム酸酸化と同じ反応を示しますのでここでアルデヒドを分離するということはできず、このままカルボン酸まで酸化されることになります。ちなみに僕の教科書ではプロトンを奪う化合物がトリエチルアミンでしたが、 O^-Acとしている文献もありました。

 僕は初めデス‐マーチンペルヨージナン(DMP)のヨウ素の価数はVIIだと思っていましたが、実際はVでlone pair のせいで勘違いしてしまっていました。酸塩基反応において電子の動きを追うことには慣れましたが、酸化還元反応において電子の動きを考えることにまだ慣れていなくてすこし悩んでしまいます(;'∀')

クロロクロム酸ピリジニウム

 これまでは第一級アルコールを酸化した場合アルデヒドを単離できずカルボン酸まで酸化されてしまう反応を見てきました。次はアルデヒドを単離できるすばらしい反応をみていきましょう!

 酸化剤として用いる化合物は上の反応式で得られるクロロクロム酸ピリジニウム(PCC)です。以下の反応が起こります。

なぜこの反応だけはアルデヒドを単離できるのでしょうか。注目するポイントは溶媒です。今回溶媒に水溶液は用いておらず有機溶媒を用いています。水溶液の場合どうなってしまうのか...?以下のようにほとんどが水和することになります。こうしてOH基が復

活(?)してこのOH基が再び酸化されることでカルボン酸まで酸化されてしまうわけです。しかしPCC酸化では得られたアルデヒドは水和しないのでさらに酸化が進むことがないというわけです。PCCとアルデヒド、セットで覚えておきましょう!

グリコールの過ヨウ素酸酸化

 これで最後です!これは今までの反応とは少し毛色が違いますよ。

隣接している炭素にOH基がついているグリコールの酸化です。酸化剤にはヨウ素を用います。

アルコールの活性化

 ヨウ素がOH基と手をつなぎ、環状過ヨウ素エステルを形成します。

酸化還元を伴う結合開裂

 ヨウ素VIIからVへと還元されるのに伴いアルコールが酸化されました。反応の見た目はシンプルなので覚えやすいですね!

 この反応で忘れてはいけないことがあります。それはcisグリコールでないと反応しないということです。transだと過ヨウ素酸と反応しません。途中ヨウ素と手をつなぐ場面がありましたが、transだとOH基が互いに離れていてヨウ素と手をつなげないのでしょう。もう一回言います、過ヨウ素酸酸化はcisのみです!

さいごに

 今回はアルコールの脱水と酸化の反応を勉強しました!初めて見る化合物が何個かあったので何回か復習してしっかり定着させましょう!では^^

有機化学 #2 ~Alcohol~ 

 こんにちは。今回は前回の続きでアルコールの物性や反応を見ていきます。

 

アルコールの物理的性質

水素結合を形成

 アルコールのOH基はOがδーHがδ+に分極しています。この分極によって水素結合が形成されます。水素結合は分子間力より強い相互作用なので分子量が同じくらいのアルカン等と比較すると沸点が高いのがわかります。

極性を持つ

 上と同じくO-Hが分極しているので極性を持ちます。さらに言えることが、極性をもつことで極性溶媒である水に溶けやすいです。

 

アルコールの酸・塩基

 アルコールのOH基はプロトンを与えることも受け取ることもできます。すなわち、弱酸にも弱塩基にもなることができます。それぞれ化学式でみていきましょう。

僕は強酸共存下での反応式に少し疑問を抱いてしまいました。それはオキソニウムイオンよりエチルオキソニウムイオンの方が強い酸なのにどうして強い酸が生成されるのだろうかというものでした。酸はできるだけプロトンを持っていたくないという考えのもとこの反応式を見ると、より強い酸であるエチルオキソニイウムイオンがプロトンを受け取る反応が直感的に納得できなかったんです。けれどここでは、硫酸のせいでオキソニウムが大量に存在しています。よってその大量に存在しているオキソニウムにプロトンを押し付けられると考えられるんですね。もしエタノールと硫酸の反応式であれば硫酸が明らかに強い酸なので直感的にも納得できたんですけど、オキソニウムが間に入るとすんなりと納得できませんでした(-_-;) ただこの後に出てくるハロアルカンへの変換においては硫酸は酸触媒として働きます。それを見据えてここでは反応式に硫酸を組み込まずにしていたのだということです。愚問に答えてくれた友達に感謝です^^

アルコールと低原子価金属(還元反応)

 反応性の高い金属が還元剤として働き自身は金属イオンになるとともに、酸化剤となるOH基がアルコキシドと水素分子になります。高校化学でナトリウムを池に投げ込んで爆発を起こす動画を見た方もいるのではないでしょうか。あんな感じの反応がアルコールでも起こるという話です。

アルコールからハロアルカン・スルホン酸エステルへの変換

 ここはSn reaction の復習になります。忘れちゃった人はここでまた思い出しましょう。過去に簡単に解説しているのでよかったら覗いてください。

有機化学 ~Sn & E reaction ~ めっちゃ基本 - 京大生ケミストのつぶやき

ハロアルカンへの変換

 まずハロアルカンへの変換ですが、ここではOH基をハロゲンに置換したいというモチベーションで反応を起こしていきます。

第三級、第二級アルカン

この反応機構をいくつかのステップにわけて理解していきましょう。

オキソニウムイオン(ヒドロニウムイオン)の生成

アルコールのOH基のプロトン

 臭化水素によって生成されたオキソニウムイオン(ヒドロニウムイオンとも言います)によってアルコールのOH基がプロトン化され活性化されます。言い換えればOH基が活性化されより脱離されやすくなったと言えます。

カルボカチオンの生成

 ここでC-O結合が開裂しカルボカチオンが生成されます。またこの反応が律速段階であり、ゆえにカルボカチオンの安定性が反応全体の反応速度に大きくかかわってくることがわかります。

求核剤との反応

 さいごに求核剤である臭化物イオンと反応して終了です。ということでハロアルカンを生成することができました。

 ではこの反応についてもう少し考えていきましょう。まずはこの反応がSn1 reaction なのかSn2 reaction なのかですが、律速段階に関与している分子は1分子だけでしたね。ということでSn1 reaction でした。まぁしっかり勉強している方なら第三級アルカンが反応物である時点でSn2 reaction がほぼ起こらないことはわかったでしょうが。Sn1 reaction は第三級、第二級アルカンで起こり得ますが第一級アルカンではほぼほぼ起こり得ません。先にも少し触れましたがこの反応の反応速度はカルボカチオンに大きく依存しました。そしてカルボカチオンの安定性は第三級>第二級>第一級となっているんでしたね。この詳しい説明は省きますが、キーワードはアルキル基による正電荷非局在化超共役です。あまり安定でない第一級カルボカチオンを中間体として経由する反応はあまり起こらないということなのです。では第一級アルカンでは何の反応が起きるのか?それを次見ていきましょう。

第一級アルカン、メチル

この反応についても反応機構を見ていきましょう。

アルコールのOH基のプロトン

 ここまでは先ほどの反応と同じです。

求核剤との反応

 ここでカルボカチオンを中間体として経由せずに求核剤の臭化物イオンと協奏的な反応を起こします。そしてここが律速段階になります。この律速段階において2つの分子が関与していますね。Sn2 reaction です。ということで第一級やメチルではSn2 reaction が進行するんでしたね。逆に第三級、第二級アルカンでは立体障害によりSn2 reaction は進行しづらいです。

少し発展~転位~

 今度は下の反応を見てみます。

炭素骨格が変わっていますね、、、。反応機構を見ていきましょう。

アルコールのOH基のプロトン

 ここまではいつも通り同じです。

カルボカチオンの生成

 ここでカルボカチオンが生成されますが、転位が起こっています。これはより安定なカルボカチオンを生成するためです。転位が起こることで結果としてとても安定な第三級カルボカチオンが生成されます。一方転位が起こらないとした場合不安定な第一級カルボカチオンが生成されます。もちろん100 : 0 = 第三級 : 第一級 のようになるとは言い切れず混合物が生成されるかもしれませんが主要生成物は選択的に第三級の方になります。

求核剤との反応

 最後に求核剤の塩化物イオンと反応してフィニッシュです。

 ということで、安定性を求めた結果炭素骨格が変わってしまうという反応例でした。

 PBr_3によるハロアルカンの合成

 この合成は第一級または第二級アルコールを反応物とした合成反応です。

あまり見慣れない PBr_3ですが生成物のH_3PO_3は見覚えのあるリン酸です。反応機構を一緒に追っていきましょう。

アルコールのOH基が求電子剤と反応

 OH基が求電子剤である PBr_3と反応して脱離能(図の漢字が間違えてますねm(__)m)が高い置換基になります。

求核剤との反応

 そして求核剤である臭化物イオンと反応してハロアルケンが合成されました。あともう2回反応を繰り返せば初めに示した反応式が得られます。

 この反応の特徴的な点が2点あります。1点目は反応条件が穏やかであるという点です。温度が0°Cでも反応するのは楽でいいですね。2つ目は転位が起こらないという点です。反応機構をみればわかりますが、これはSn2 反応機構です。よって立体反転はしますが転位はしません。炭素骨格を維持したいときはもってこいですね。

SOCl_2, SOBr_2によるハロアルカンの合成

 ハロアルカンへの変換はこれでラストです。結構長かったですね(-_-;) この反応も第一級または第二級アルカンを用います。

 三級アミンであるピリジンまたはトリエチルアミンを触媒に用いて反応を進めます。教科書に一部反応機構が詳しく載っていなかったので僕の考えた反応機構を一部載せてます(多分あってる、、、はず)。またピリジンを用いた場合の反応式を書いています(特に違いはないですけどね)。

ピリジンとの反応

アルコールの活性化

 SOCl_2と反応して脱離能の高い置換体が生成されます。なにか既視感がありますね。

求核剤との反応


 最後に求核剤の塩化物イオンと反応して終了です。

 今回の反応についても2点言及したいことがあります。1つ目は先と同じくSn2 反応機構であるため転位が起こらないということ、2つ目は生成物が目的物の他に気体の二酸化硫黄とピリジンと反応する塩化水素であるということです。これにより塩化アルキルを分離するときに問題が生じないという利点があります。

スルホン酸エステルへの変換

 ラストスパートです。ラストはスルホン酸エステルへの変換を見て終わりにしましょう。

 特に教科書には反応機構が載っていなかったので省略しますが、ピリジンの働きは先ほど見たものと同じなのでどんな反応機構なのか予想はできますね。あまり見たことがないようなスルホン酸エステルですが、どんなところに学ぶ意義があるのでしょうか。ヒントはスルホン酸アニオンがとても安定で非常に弱い塩基だというところにあります。答えはスルホン酸アニオンが優れた脱離基であるということです。スルホン酸エステルに変換することで求核置換反応やβ脱離反応を起こしやすくすることができるんです。

 

さいごに

 今回はこれで終わりです。少し盛沢山でしたかね?僕は反応式とか書かなきゃいけなかったので結構疲れました(;'∀') 特にハロアルカンへの変換の話が少し長かったのでしっかり復習してインプットしましょう。

 京都では桜の花が散り始めてきている時期になりました。ただ勉強へのモチベーションはそれと同時に散らないよう、程よくアクセルを踏み続けていきたいですね。では^^

有機化学 #1 ~Alcohol~ 

 こんにちは。今回からは僕が大学で学んだことの復習として書いていこうと思っています。授業の進捗度に依存しますのでまとまりの悪い記事になってしまうことがあるかもしれませんが、そのときはご了承ください。

 まずはAlcohol について何回かにわけてやっていきます。今回は初回と言うことで復習がメインの話になりますが、一緒に勉強していきましょう^^

 

構造式

 分子を表す方法はいくつかあります。その代表例としてルイス構造式ケクレ構造式、そしてそれらを組み合わせた構造式があげられます。

ここで少し注意してほしいことがあって、正式なルイス構造式についてです。多くの人がルイス構造式と言うとルイスとケクレが混合した構造式を思い浮かべるかと思うのですが、正式なルイス構造式は価電子を点で表記したものなので少し違います。大学の教科書でもここを混同していることが多いらしいです(高校以前の教科書に比べて厳しく審査されないためらしい)。けど実際ルイス構造式と書くときは混合ver. を自分も書くのであまり神経質にならなくてよいと思います。まぁ余談はこれくらいにして、上にあげたような構造式があるよというお話でした。

 

Alcohol の命名

アルカンにOH基が1つの場合

 次は命名法です。IUPAC名の付け方をおさらいしましょう。ちなみにIUPAC名には旧のもの新のものがあります。一応どちらも紹介しますね。図の分子を例に見ていきましょう。手順は以下の通りです。

1.OH基を含む最も長い炭素鎖を主鎖とする。

 ここは基本的には簡単なパートですね。Aから順にPropane, Pentane, Cyclohexane です。迷うことがあるとしたら、同率で最も長い炭素鎖が複数見つかってしまった場合です。このときは置換基がより多い方の炭素鎖が主鎖となるんでしたね。詳しくは別の記事の発展偏で解説していますのでよかったら見てみてください。

有機化学 ~命名法~ Alkane - 京大生ケミストのつぶやき

2.OH基の番号が小さくなるように末端から位置番号を振る。

 位置番号を振ります。ここで間違えると全く別の分子を伝えることになりかねないので重要なステップです。今回はAlcohol を考えているのでOH基の番号が最小になるように位置番号を振りましょう。Cについて補足説明です。Cycloの場合はOH基に結合している炭素が1番になります。次に番号を振っていくのが右回りなのか左回りなのかですが、次の置換基の番号が小さくなるように振りましょう。よってメチル基の位置をみれば今回は左回りですね。

3.主鎖の名前を-e から-ol に変える。

 ここでは名前をいじっていきます。ここで旧IUPAC名と新IUPAC名が異なった形になります。まず旧IUPAC名だとAから順に1-Propanol, 2-Pentanol, Cyclohexanol となります。一方新IUPAC名だとAから順にPropan-1-ol, Pentan-2-ol, Cyclohexanol となります。慣れれば新IUPAC名の方が命名しやすいと思うのでぜひ新IUPAC名で書くようにしてみてください。CのCyclohexanol について番号はいらないのか疑問に思った方がいると思いますが、OH基が結合している炭素が1番なので、OH基が1つの場合はわざわざ位置を教えなくてもわかるため書いていません。

4.置換基の名前を位置番号とセットにして組み合わせる。

 最終ステップです。最後に置換基の名前を位置番号とセットにして添えて終了です。AからPropan-1-ol, 4-Chloropentan-2-ol, 3-Methylcyclohexanol です。

他の場合

 OH基が複数ある場合や不飽和アルコールについても見ていきましょう。

アルカンにOH基が2つ:ane → anediol (ex. Propan-1,2-diol)

アルカンにOH基が3つ:ane → anetriol (ex. Butan-1,2,3-triol)

炭素間2重結合:ene → enol (ex. Prop-2-en-1-ol, (Z)-2hex-2-en-1-ol)

 ※不飽和の場合の新IUPAC名も例みたく、-ene の前に二重結合がある位置番号を添えてもらえば大丈夫です。

 

さいごに

 今回はここらへんで終わりにしようと思います。ほとんどが復習でしたね。基礎的な知識で重要だからこそ何度も出てくるんだと思います。ご質問・ご意見等ございましたらコメントによろしくお願いします。では^^

 

有機化学 ~Sn & E reaction~ Sn2 reaction での立体反転

こんにちは。今回はSn2 reaction で起こる立体反転について、その原理を見ていこうと思います。原理を知っていることで忘れずらくなると思うので一緒に勉強していきましょう^^

 

Leaving group の反対側から攻撃している

 立体反転が起こる理由は簡単な話で、Nucleophile がLeaving group の反対側から炭素にアタックするためです。Nucleophile がLeaving group の方向から炭素と結合すれば立体反転は起きませんが、真反対から攻撃するために起きてしまうんですね。ではなぜ反対側から炭素に攻撃するのでしょうか。

Nucleophile がbackside attack する理由

1.Polarization 

 まずは炭素とleaving group の間のpolarization について説明します。炭素とleaving group のelectronegativity のギャップから電荷の偏りが生じます。具体的には炭素は部分的に正に、leaving group は部分的に負に帯電します。ゆえに炭素はelectron poor な状態であるのです。そしてnucleophile はelectron rich ですからelctron poor な炭素めがけて攻撃しに行くのです。

2.Electron density & Anti bonding 

 次にC-Lv(Leaving group) が切断されC-Nu(Nucleophile) が生成されるメカニズムを見ていきます。初めに概要を説明するとNuclephile のelectrion density によってanti C-Lv bond を壊す効率的な方法がNucleophile によるbackside attack ということらしいです。(正直自分もまだ勉強中でantibonding C-Lv orbital やそれがどう結合の分裂にかかわってくるのかしっかり理解できていません(>_<;)。なので教科書の不自然な和訳とそれに対する自分なりの解釈で話そうと思います。)教科書を読んでいる感じ、Nu のelectron density がantibonding C-Lv orbital を埋める(fillする) ことでC-Lv が壊され、さらにC-Nu σ bond が強められるらしいです。確かにanti oribital に電子があると結合が不安定になるというのは学んだことがあるので納得はできますね。そしてantibonding C-Lv の成分のほとんどがC のLeaving group に対して反対側(Nucleophile がアタックする方向)に存在しているらしくて、ゆえにbackside attack こそが一番効率的にanti orbital を埋める方法になるらしいです。

 簡単にまとめると、C-Lv bond を壊したい → C-Lv anti orbital を埋めたい → anti orbital の成分はほとんどC の反対側にある → C の反対側からアタック ということです。

さいごに

 今回はSn2 reaction で大事な立体反転について勉強しました。自分自身完璧に理解できていなかったためわかりずらい文章になってしまったのは申し訳ないです。大きな間違いはないとしてもちょっとした誤りがあるかもしれませんので、そのときはご指摘お願いします m(__)m 

では^^

有機化学 ~Acids & Bases~ 酸の強さ

 こんにちは。今回は酸の強さについてです。酸の強さにどんな要因がかかわっているのか一緒に勉強していきましょう。

1.Electronegativity

 イオンになったときに負の電荷を帯びる原子のelectronegativity が大きいほど、酸が強いといえます。これはその原子のelectronegativity が大きいことで電子をより強く保持するためにより安定にイオンが存在することができるからです。例を見てみましょう。

O, N, C を比較すると、C < N < O の順でelectronegativity が大きくなります。同じ並びで酸も強くなっていますね。ここで注意すべきことがあります。electronegativity で比較できるのは周期表のうちの同周期の場合だけです。なぜなら周期が変わってしまうと原子の大きさや溶解に要するエネルギーなどが大きく変わってしまうからです。それらがほぼ同じとみなせる同周期の原子の場合、electronegativity で判断ができるということなのです。

2.原子の大きさ

 イオンにおいて負の電荷を帯びている原子の大きさが大きいほど、酸が強いといえます。これは原子の大きさが大きいほど、より負の電荷が非局在化することができるからです。この具体例として、methanol とmethanethiol があげられます。


O とS はともに16族であり、O は第2周期、S は第3周期です。周期が大きいほど原子の大きさは大きくなるのでS の方が大きく、よってmethanethiol の方が酸が強くなるのです。他の例も見てみましょう。HF, HCl, HBr, HI のハロゲン化水素たちです。同じ理由で周期が大きい順に原子の大きさも大きくなり、酸も強くなります。HF < HCl < HBr < HI ですね。ここで1つ留意するべき点があります。それはハロゲンのelectronegativity の大きさは、F > Cl > Br > I であるという点です。1.Electronegativity の話に反していますね。これは化学を勉強していればよく出会う例で、ある傾向同士が互いに反してしまう場合です。どちらかの傾向に実験的結果は従うので割り切ってもらうしかないです。ハロゲン化水素の酸の強さについては、原子の大きさについての傾向が当てはまるんですね。

3.電荷の非局在化

 電荷がより非局在化するとより安定することができるという話はこれまでにも出てきました。ここでは特にresonance についてcarboxylic acids とalcohols を例にみていきます。置換基のないcarboxylic acids とalcohols のpKa はそれぞれ4~5, 15~18 におさまります。ゆえにcarboxylic acids の方が酸が強いのですがこの理由は共鳴による電荷の非局在化で説明できます。

alkoxide anion の場合は、負の電荷がO にしか局在化されていません。一方carboxylic acid のイオンの場合2つの共鳴構造書くことができ、負の電荷が非局在化されていることがわかります。Carboxylic acids のconjugate base がより安定であるため、carboxylic acids がより強い酸となるんですね。

4.Inductive Effect

 次はInductive effect によるイオンの安定化の話です。Inductive effect とはelectronegativity の違いにより生じる電子密度の偏りで、電気的な極性です。Electronegativity の大きな原子が置換しているほど強い酸と言えるのですが、まずは例を見てみましょう。

C, F のelectronegativity はそれぞれ、2.5, 4.0 です。よってC-F 間ではC側にδ+、F側にδーを示す極性が現れます。このCに現れるδ+がOのマイナスを安定化させることで、イオン全体の安定さが増し、ゆえに2,2,2-trifluoroethanol の方がethanol より強い酸といえるのです。

ここでinductive effect の効力について言及したいと思います。下の図を見てください。

F がO から離れていくにつれて酸が弱くなっているのがわかります。炭素2つより離れると大きなelectronegativity をもつ原子によるinductive effect はほとんどなくなってしまいます

Carboxylic acids に関しても同じ理由でelectronegativity の大きいCl が結合しているchloroacetic acid の方がacetic acid より酸が強いです。Inductive effect の影響についても同じように、離れれば離れるほど弱まります。

5.混成軌道のs成分

 Conjugate base において負に帯電する原子の混成軌道を調べることで安定性がわかります。次を見てください。

Alkyne, alkene, alkane で比べると、alkyne > alkene > alkane の順で酸の強さが異なっています。混成軌道に着目するとこの傾向を説明することができます。負に帯電している炭素の混成軌道はalkyne から順に、 sp, sp^2, sp^3 です。そしてs軌道の割合は spから順に50%, 33%, 25% です。なぜs軌道の割合が大きいと安定性が増すのでしょうか。それはs軌道にある電子がエネルギー的に安定で、ゆえにより強く原子核に保持されるからです。言い方を変えれば、s軌道の成分が大きくなることでよりelectronegative になるのです。

さいごに

 今回は酸の強さに影響を与える要因について勉強しました。全体を通して大事な考え方はconjugate acid の安定性です。それに影響を与えるのが、electronegativity, 原子の大きさ, 電荷の非局在化, inductive effect, 混成軌道のs成分でした。

 僕が使っている教科書はAE Organic Chemistry 9e です。興味ある方は見てみてください。リンクを貼っときますね。

www.cengageasia.com

結構盛りだくさんな内容でしたね。復習もしっかりやりましょう。意見・質問ありましたらコメントください。

では^^

微分積分学 手段としての陰関数定理

 今回は陰関数定理です。僕は数学者が考えるような複雑な概念は理解できなくて、今回の定理についても数学的背景を完璧に理解しているわけではありません。よってここではタイトルにあるように手段としての陰関数定理を述べようと思っています。使い方だけがわかればいいよ!みたいな人向けです。そこを妥協できればただの作業ですから、肩の荷を下ろして一緒に見ていきましょう。

陰関数定理って?

 陰関数定理自体は、ある条件を満たす陰関数(ex. F(x, y) = 0)は陽関数(ex. y = f(x))で表すことができるというものです。僕みたいな工学部の人間で数学を詳しいところまでつめてやらない人にとっては、関数の条件を与えられて「条件を満たす関数f(x) が存在することを証明しろ」みたいな形で目にすることがほとんどだと思います。

陰関数定理の問題を解く手順

例題と一緒に手順を見ていきましょう。

1. 示したい関数を文字でおく

 まずは存在を示したい関数を文字でおきます。今回はy=f(x) とおいてみましょう。

2. 新たな関数Fを設定

 次に新しく関数Fを設定します。変数は区別しておきましょう。今回の場合では、もともとある変数がx で新しく導入した変数はy ですね。F(x, y) からf_1(x, y)への関数、F(x, y) = (f_1(x, y))とします。ただしf_1(x, y)=y-cos(y)+x^2+2e^xです。f_1(x, y) って何!?って思うと思いますが、まず下付きで番号を振ったのは便宜上この方が一般的に語りやすいだけで、今回の場合は特に意味はありません。次にf_1(x, y)=y-cos(y)+x^2+2e^xとしたのは、条件式として与えられている式を用いて、今考えたい近傍の点で0 になるようにします。今はx=0(このときf(0)=0よりy=0)近傍での話なので、 (x, y)=(0, 0)f_1(x, y)=0になるように定めるわけです。まだ少しわからない人も他の例題を通していくうちにわかってくると思うのでとりあえず先に進みましょう。

3.Fのヤコビ行列みたいな行列をつくる

 ヤコビ行列みたいな行列なんて数学者に聞かれたら怒られそうな表現ですが許してください。どんな行列かというと、Fを新たに導入した変数で偏微分していきます。今回は(\frac{\partial f_1}{\partial y}\left(x,y\right))だけで行列って感じがしないですが、他の例題だと何を言っているのかもう少しわかると思います。一旦進みましょう。

4.f_n: C^\infty級 F(0)=0行列式≠0を言う

 陰関数定理に必要な事柄を述べていきましょう。もう一度言いますが、なんでこれらの条件を言うと関数の存在が示せるのかは自分はわかっていません。ただ問題を解くうちに気づいたことをまとめているだけです。さて、f_1: C^\infty級 は明らかでいいですね。 F(0, 0)=(f_1(0, 0))=0もすぐ言えます(これが満たされるようにf_nを設定したわけです)。ヤコビ行列みたいな行列の行列式も計算してそれが考えている点(今は (0, 0))で0でないことを言います。

5.陰関数定理より...

 これらをもって陰関数定理がいえますので、よってf(x)の存在が証明されました。これで1つ目の問題は解決です。

6.さらに言えること

 2つ目の問題にいきましょう。3.でつくったヤコビ行列みたいな行列をAとしましょう。また別の行列をつくります。AがFを新たに導入した偏変数で微分したものの行列だったものに対して、BをFを元の変数で偏微分したものの行列とします。今回は B=(\frac{\partial f_1}{\partial x}\left(x, y\right))です。さらに新たに導入した変数を元の変数で偏微分したものの行列をC(= (\frac{\partial y}{\partial x}))とすると、C=-A^{-1}Bが成り立ちます。これで2つ目の問題が解けます。問題がシンプルなせいで逆に何をここでやっているのかわかりずらいとは思うのですが、他の例題を通してより理解を深めましょう。

問1の解答

 厳密な解答ではないかもしれないですが、一応。

 次の例題です。訂正があって u=2x+sinyです。

1. 示したい関数を文字でおく

 今回はすでに問題内で定められていますね。x=f(u,v), y=g(u,v)です。

2. 新たな関数Fを設定

 今回はF(u,v,x,y)=(f_1(u,v,x,y),f_2(u,v,x,y))とし、f_1(u,v,x,y)=2x+siny-u, f_2(u,v,x,y)=y+e^\infty -1-vとします。とりあえず(u,v)=(0,0)F(0,0,0,0)=(0,0)となるように定めましょう。

3.Fのヤコビ行列みたいな行列をつくる

 ここで作りたい行列AはFを新たに導入した偏変数で微分したものでした。今回の場合、A=\begin{pmatrix} \frac{\partial f_1}{\partial x} \frac{\partial f_1}{\partial y}\\\frac{\partial f_2}{\partial x} \frac{\partial f_2}{\partial y}\end{pmatrix}です。なんとなく言ってたことがわかりましたかね。

4.f_n: C^\infty級 F(0)=0行列式≠0を言う

 ここはただ計算してください。

5.陰関数定理より...

 1つ目の題意はまず示せました。

6.さらに言えること

 次に行列B(Fを元の変数で偏微分したものの行列)を求めて、行列C(新たに導入した変数を元の変数で偏微分したものの行列)を求めます。B=\begin{pmatrix} \frac{\partial f_1}{\partial u} \frac{\partial f_1}{\partial v}\\\frac{\partial f_2}{\partial u} \frac{\partial f_2}{\partial v}\end{pmatrix}で、C=\begin{pmatrix} \frac{\partial x}{\partial u} \frac{\partial x}{\partial v}\\\frac{\partial y}{\partial u} \frac{\partial y}{\partial v}\end{pmatrix}==\begin{pmatrix} \frac{\partial f}{\partial u} \frac{\partial f}{\partial v}\\\frac{\partial g}{\partial u} \frac{\partial g}{\partial v}\end{pmatrix}です。C=-A^{-1}Bより2つ目の問題も計算して終わりです。

問2の解答

 解答は以下の通りです。f_1(u,v,x,y)=u-2x-siny, f_2(u,v,x,y)=v-y-e^\infty +1とおいて解答をつくってしまいましたが、結局は同じです。

 最後の例題です。またまた訂正です。2.では f'(1), g'(1)を求めてください。

問3の解答

 解答のみです。

さいごに

 今回は工学部生としてあまり数学的に言及しない程度に陰関数定理の使い方についてみてみました。問題を解いていくうちにアルゴリズムみたいなものを掴めると思います。微積分学って難しいですよね。

 数式をたくさん書くことに慣れていなくて自分で見つけられた以外にもミスがあるかもしれませんが、あったら教えてください。

では^^