京大生ケミストのつぶやき

理系京大生が勉強中に思ったことを気軽につぶやきます。

有機化学 ~Sn1, E1 reaction~ Rate

 今回考える問題は、図の2つの化合物のうちどっちがエタノール溶媒下でSn1 & E1 reaction が早く進行するか、ということです。

Sn1&E1 reaction の rate を考えるときの前提

 Sn1 reaction も E1 reaction も中間体としてcarbocation が生成され、その安定性が rate の大小に直結する。すなわち、より安定なcarbocation が生成されるSn1 & E1 reaction ほど早く進行する。よって今回考えるべきことは、

この2つのcarbocation の安定性であり、結論だけ先に言ってしまえば右の1-Bromo-1-methylcyclohexane の反応が早く先行すると考えられる。以下でその理由を考えてみよう。

 

考察

 では実際に安定性について考察していく。まず誰もが気にすることが何級なのかということでしょう。3級>2級>1級の順で安定性が変わるのだが、今回の場合どちらも3級carbocation でその着眼点では違いを確認することはできない。

 とりあえず僕はここで手が止まって長考しました。結局わからなかったのでcarbocation の安定性について記述されている教科書とノートを確認すると、1. hyperconjugation (超共役)と2.結合しているalkyl による正電荷の非局在化 が書いてあった。ここでは詳しく説明しないが、1.については正電荷を帯びている炭素に隣接している炭素とそれに接合している水素との間の電子が正電荷を帯びる炭素に流入することによる安定化の話で、2.ではalkyl が多く接合していると正電荷がより非局在化して安定するという話である。1.の視点で考えてみると、右の化合物の方が正電荷を帯びる炭素に隣接するC-Hの数が1つ多いのでその分安定するのかもしれない(?)。一方2.の視点で考えてみると左の化合物の方が正電荷がより非局在化しそう(推測)。

 結局納得できる代表的な原因が見つからなかった。そんな中とても基本的なところを見落としていたことに気づいた。それは原子それぞれの回転による安定化である。耳にしたことはあるだろうけど、cycloalkane は回転することができそれによる安定化が確認できる。今回の場合、右の化合物は通常どおり回転することができるのだが、左の化合物は回転することができない。そのために回転できる右の化合物のほうが安定であるということができるでしょう。ということで先述した結論に至ったのであった。

 

さいごに

 結局終わってみれば注目すべきはcarbocation それ自体の安定性ではなく構造上の安定性であった。少し前に勉強したことだったから忘れてしまっていた。

 今回はそもそもSn1&E1 reaction が進行するものとして進めたり、超共役といった話も省いたりしたがsubstituion reaction が進行するのか又はelimination reaction が進行するのかといった話や説明を省いた話は今後どこかでまとめようかな。

 なにか意見・質問があればコメントしてください。

では^^