京大生ケミストのつぶやき

理系京大生が勉強中に思ったことを気軽につぶやきます。

有機化学 ~Sn & E reaction ~ めっちゃ基本

 今回はSn1, Sn2, E1, E2 reaction とは?という話をしていきたいと思います。有機化学をやるうえで誰でも学ぶ基本的な話なので一緒に勉強していきましょう^^

 

Sn reaction

 まずはSn1 & Sn2 reaction です。Sn のS はsubstitution でN はnucleophilic の意味です。1は1つの分子が2は2つの分子がrate-determing step(律速段階)にかかわっているということです。反応機構が異なるのでブロモメタンと水酸化物イオンの反応を例にみていきましょう。

Sn2 reacction

 まずはSn2 reaction です。上の図でわかるように2つの分子がrate-determing step にかかわります。ここではBr-C の結合の分裂とO-C の結合の生成が同時に起き、それが律速段階です。ゆえに反応速度は水酸化物イオンとブロモメタンの2つ濃度に依存します。ここで忘れていけないのは、nucleophile(水酸化物イオン)はleaving group(Br)の反対側から炭素に近づくということです。これにより立体反転がおこります。今回はブロモメタンがキラル体ではないので重要ではないですが、キラル体でSn2 reaction を考えるときには気を付けましょう。なぜnucleophile がleaving group の反対側から近づくのかは、ここでは省略します。

Sn1 reaction

 次はSn1 reaction です。まずはBr-C の結合が分裂し中間体としてcarbocation が生成、そしてO-C の結合が生成します。律速段階はBr-C の結合が分裂する段階であり、よって反応速度はブロモメタンにのみ依存します。律速段階には1つの分子しかかかわっていませんね。またもうひとつSn2 reaction と異なることは、nucleophile(水酸化物イオン)が図のように両サイドから結合しうる点です。これによりキラル体が反応物であっても生成物は”ほぼ”完璧なラセミ体となります。なぜほぼなのかはここでは省略します。

 

E reaction

 次にE1 & E2 reaction です。E はelimination の略で、1 & 2の意味はSn reaction と同じ上で説明したものと同じです。一緒に反応機構を追っていきましょう。

E2 reaction

 まずはE2 reaction です。Sn2 reaction 同様にthe rate-determing step で2つの分子が同時に反応します。反応機構をみていくと、まずNucleophile の酢酸イオンがHに攻撃します。このHはleaving group のBr に対してβ炭素に結合するHです。それと同時にC-H 間の電子がC-C 間へ移動、C-Br 間の電子がBr に移動して終了です。留意するべき点が2点あります。1点目は脱離(elimination)が起こるときnuclephile が攻撃する原子とleaving group の位置関係がanti & coplanar の関係にあるということです。日本語で何というのかわからないのですが、同平面上(coplanar)で逆(anti)の関係にあるという意味です。なぜこの関係であると良いのかも今回は省略させていただきます。これにより今回の場合だとtrans が選択的に生成されます。2点目は脱離にかかわるH はどれかということです。先にβ炭素のH と言いましたが、β炭素は今回2つ存在します。それぞれで脱離反応を考えると下のようになります。

 図にあるようにtrans-2-Butene が主要の生成物です。この選択制は生成物であるアルケンの安定性に起因します。アルケンはC=C により多くの置換基が結合しているほど安定性が増すとなっています。この理由もここでは省きます。よって置換基が2つのtrans-2-Butene の方が安定だということでmajor product になります。

E1 reaction 

 最後にE1 reaction です。こっちはrate-determing step に1つの分子だけがかかわっているんでしたね。今回の場合反応速度は2-Bromo-2-methylpropane の濃度にのみ依存します。反応機構はSn1 reaction と少し似ていますね。まずleaving group のBrとCの結合が分断しcarbocation が生成します。そしてnucleophile の酢酸イオンがβ炭素に結合しているHに攻撃しアルケンが生成して終わりです。ここでも最も安定なアルケンがmajor product になります。

 

さいごに

 今回はSn1, Sn2, E1 & E2 reaction について基本的な部分について話しました。結構説明を省いたところがあったので後々それらについても触れていきたいと思います。

 また、読んでいて日本語と英語が混在して読みにくかった方もいらっしゃったと思うのですが、僕が使っている教科書が英語ですのでたまに慣れている英語表記で書いてしまっている次第です。特に名詞は日本語で何と言うのかわからない場合があるので正しくない表現を使っているかもしれないのでそこもご了承ください。まぁ内容の確認程度に大きな目で読んでいただけると幸いです。

では^^

有機化学 ~Sn & E reaction~ Solvent とNucleophilicity of halide

 今回はSn & E reaction において重要となってくるhalide のnucleophilicity にsolvent がどのような影響を与えるのか見てみましょう。

Solvent について

 Solvent はpolar かnonploar、protic かaprotic なのかでおおきく4つにわけることができます。そしてSn & E reaction では反応速度がある程度ないと問題なのでpolar protic solvent またはpolar aprotic solvent が用いられます。なのでここではこの2つに着目して考察したいと思います(よってprotic なのかaprotic なのかに注目します)。

 

Halide のなかでのNucleophilicity

 Nucleophile が炭素に攻撃することでSn & E reaction が進行し始めます。よってgood nucleophile とは炭素に攻撃しやすいものであるはずです。今回はhalide について考えるのでその反応性に着目すればF- > Cl- > Br- > I- (極性の大小もこの順)であるのでF- が一番よいnucleophile と言えそうです。しかしこれはpolar aprotic solvent のとき成り立つもので、polar protic solvent の場合は順番が逆になります(F- < Cl- < Br- < I-)。この理由を以下で見ていきましょう。

Nucleophilicity の大小を考えるうえで重要な考え方

 先述した通り、good nuclephile とは炭素へ攻撃のしやすい、すなわち炭素と反応しやすいといえます。よってsolvent とより強く相互作用してしまうnucleophile はgood nucleophile ではないといえます。なぜならsolvent と反応してしまって炭素と反応しづらくなっているからです。この考え方をしっかりおさえましょう。

protic, aprotic それぞれの特徴

 protic solvent は正電荷とも負電荷とも強く相互作用できます。一方aprotic solvent は正電荷とは相互作用できますが負電荷とはあまり相互作用できません。下のイラストを見てみてください。

 polar protic solvent ではナトリウムイオンもヨウ素イオンも水と相互作用しています。一方polar aprotic solvent ではナトリウムイオンはアセトンと相互作用できていますがヨウ素イオンは立体障害により相互作用できていません。

全て考慮すると

 polar aprotic solvent 下では負に帯びたhalide はsolvent とはそれほど強く相互作用しません。よってhalide の反応性の大小とnucleophilicity の大小が一致します。しかしpolar protic solvent ではhalide がsolvent と相互作用してしまいます。極性の強いhalide ほど強くsolvent と相互作用してしまい、よってbad nucleophile になってしまいます。ゆえにhalide のnucleophilicity の大小関係はhalide の極性の大小関係を逆転したものになるのです。

 

さいごに

 この大小関係の話はわからなくなりやすいのでしっかり復習しておきましょう。

質問・意見がありましたらぜひコメントしてください。

では^^

有機化学 ~命名法~ Alkane

 今回はAlkane の命名法について書いていこうとおもいます。ここが土台になるからしっかり覚えようね^^

 

命名するまでのステップ

 命名するまでの流れをおおまかに捉えると、

1.主鎖の決定

2.位置番号の決定

3.最終決定

の3ステップで命名できる。以下で発展的な複雑な場合も含め詳しく見てみよう。

 

1.主鎖の決定

 化合物は主鎖とそれに結合する置換基とにわけることができ、まずその主鎖を決定する。基本的には炭素が一番多く結合している炭素鎖が主鎖になる。例えば下の図の、

化合物Aでは一番長い炭素鎖は炭素数が5の鎖で、化合物Bでは炭素数7の鎖であるから。それぞれ主鎖はPentane とHeptane となる。

~発展~

 ここで間違えやすい構造を見てみよう。

 いつものように主鎖を決定するために炭素数を数えていくと、ともに炭素数10の炭素鎖が2つ見つかる。ではこのとき、どちらが主鎖となるのか。それは置換基がよりついている炭素鎖が主鎖になる。

 今回は炭素数だけみるとAとBの2通りの取り方があるが、Aの場合置換基の数は3つなのに対しBの場合は置換基が2つである。よって置換基の数が多いAの取り方が正しいということになる。主鎖はDecaneである。

 

2.位置番号の決定

 位置番号は置換基の場所を示すためのもので端から1, 2, 3,,, と番号を振っていく。どっちの端から番号を振っていくのかというと、番号を振っていったときに初めにくる置換基を示す番号がより小さい番号になる方である。いまいちわかりずらいと思う。百聞は一見に如かずということで例を見ていこう。

  化合物Aについて、置換基の位置を表すと(3, 4) または(2, 3) です。初めにくる番号がより小さいのは青の位置番号なので青が正解です。化合物Bについても(5) または(3) なので青の位置番号が正解です。

~発展~

 では少し迷いやすい構造についてみてみましょう。

 まずは先ほど見た化合物です。同じように置換基の位置を番号で表すと(3, 6, 8) または(3, 5, 8) です。初めにくる番号はともに3で同じです。このときは次の番号を比べてみましょう。そうすると5 です。よってより小さい番号をもつのは青ですね。よって青の方法が正解です。ここで勝手に番号の和をみたり置換基のアルファベットを判断したりしないようにしましょう^^

3.最終決定

 最後のステップです。ここは置換基名を英語で書ければ簡単です(しっかり英語で名前を覚えておきましょうね^^)。もう一度化合物の構造を示します。

 化合物Aでの置換基はChloro とMethyl です。化合物BではMethyl だけですね。これを3-chloro, 2-methyl 、3-methyl のように位置番号とセットにしたら、アルファベット順で並べていきます。3-Chloro-2-methyl, 3-Methyl とできました。最後に主鎖の名前を付けて、Aは3-Chloro-2-methlypentane、Bは3-Methylheptaneとなります。

~発展~

 下の化合物についても命名しましょう。

 置換基は、3-methyl, 6-butyl, 8-methyl ですね。アルファベット順に並べて主鎖はdecane だったので、6-Butyl-3,8-methyldecane となります。

 

例題(発展)

 この化合物を例題としてみてみましょう。ここで言ったことだけを忠実にやった方なら2通りの答えが出たはずです。2-Chloro-5-methylhexane と5-Chloro-2-methylhexane です。先に答えを言うと正しいのは前者の2-Chloro-5-methylhexane です。どのように導かれるのか一緒に見ていきましょう。

 まず1.主鎖の決定ですがこれは簡単でhexane ですね。次に2. 位置番号の決定で、ここで迷うはずです。(2, 5) または(2, 5) ですがともに同じです。番号に違いがあれば小さい番号が早くくる番号が正しいと話したのですが、今回は判別ができません。このときは置換基のアルファベットが重要になります。いったん3.最終決定において2通りで命名してみましょう。2-Chloro-5-methylhexane と5-Chloro-2-methylhexane でした。このとき小さい番号が初めにくる方が正しい命名法となります。ゆえに前者になるわけです。

 

さいごに

 Alkane の命名法をステップにわけてみてきました。位置番号の大小で決めるのかアルファベット順で決めるのか混同しやすいので復習してしっかり定着させましょう。

 なにか意見・質問がありましたらコメントしてください。

では^^

有機化学 ~Sn1, E1 reaction~ Rate

 今回考える問題は、図の2つの化合物のうちどっちがエタノール溶媒下でSn1 & E1 reaction が早く進行するか、ということです。

Sn1&E1 reaction の rate を考えるときの前提

 Sn1 reaction も E1 reaction も中間体としてcarbocation が生成され、その安定性が rate の大小に直結する。すなわち、より安定なcarbocation が生成されるSn1 & E1 reaction ほど早く進行する。よって今回考えるべきことは、

この2つのcarbocation の安定性であり、結論だけ先に言ってしまえば右の1-Bromo-1-methylcyclohexane の反応が早く先行すると考えられる。以下でその理由を考えてみよう。

 

考察

 では実際に安定性について考察していく。まず誰もが気にすることが何級なのかということでしょう。3級>2級>1級の順で安定性が変わるのだが、今回の場合どちらも3級carbocation でその着眼点では違いを確認することはできない。

 とりあえず僕はここで手が止まって長考しました。結局わからなかったのでcarbocation の安定性について記述されている教科書とノートを確認すると、1. hyperconjugation (超共役)と2.結合しているalkyl による正電荷の非局在化 が書いてあった。ここでは詳しく説明しないが、1.については正電荷を帯びている炭素に隣接している炭素とそれに接合している水素との間の電子が正電荷を帯びる炭素に流入することによる安定化の話で、2.ではalkyl が多く接合していると正電荷がより非局在化して安定するという話である。1.の視点で考えてみると、右の化合物の方が正電荷を帯びる炭素に隣接するC-Hの数が1つ多いのでその分安定するのかもしれない(?)。一方2.の視点で考えてみると左の化合物の方が正電荷がより非局在化しそう(推測)。

 結局納得できる代表的な原因が見つからなかった。そんな中とても基本的なところを見落としていたことに気づいた。それは原子それぞれの回転による安定化である。耳にしたことはあるだろうけど、cycloalkane は回転することができそれによる安定化が確認できる。今回の場合、右の化合物は通常どおり回転することができるのだが、左の化合物は回転することができない。そのために回転できる右の化合物のほうが安定であるということができるでしょう。ということで先述した結論に至ったのであった。

 

さいごに

 結局終わってみれば注目すべきはcarbocation それ自体の安定性ではなく構造上の安定性であった。少し前に勉強したことだったから忘れてしまっていた。

 今回はそもそもSn1&E1 reaction が進行するものとして進めたり、超共役といった話も省いたりしたがsubstituion reaction が進行するのか又はelimination reaction が進行するのかといった話や説明を省いた話は今後どこかでまとめようかな。

 なにか意見・質問があればコメントしてください。

では^^

Hatena Blog はじめました

そこら辺にいる京大生です。

 突如なにを思ったのかブログを始めることにしました。生まれてこの方長く続いたことは片手で数えられる程度しかないので、いつの間にか消えるかもしれないですしいつの間にか復活するかもしれないですが、気ままにやっていこうと思っています。

 ここでは勉強中思ったことや考えたことを無責任に書こうと思っています。急な方向転換があるかもしれないですが今のところそれがメインです。不定期ですので。

では^^